書評 「ALPS水・海洋排水の12のウソ」烏賀陽弘道 著 2023年11月4日 第1版第一刷 三和書籍(4)ALPS水・海洋排水の現状

書評 「ALPS水・海洋排水の12のウソ」烏賀陽弘道 著 2023年11月4日 第1版第一刷 三和書籍(4)ALPS水・海洋排水の現状

本原稿は、本来昨年9月に投稿予定でしたが、HPの技術的問題により半年以上遅れてしまいました。そのため、時機を逸したものになり申し訳ありません。ただ、現時点で改めて本著書を読み直しても、指摘された問題は全く放置されたままで、広い意味での廃炉問題は、無限に税金が無駄に使われ続ける泥沼といえる矛盾が深まりつつあります。今回は、幾つかの新聞記事を取り上げて「ALPS水・海洋排水の現状」に迫り、政治家が科学者を利用して国民を騙し続ける現状を、少しでも声を上げて変えていきたいと思います。

    ☟参照記事1より引用

*海洋排水開始後2年の現状

2023年8月24日に海洋排水が始まって2年を過ぎた。この間約12万トンの排水を行った。その結果、原発敷地内に約1000基の保管タンクに約134万トン保管されていた処理水は約128万トンとなった。この差6万トンと排水量12万トンとの食い違いは、今でも毎日平均70トンの新たな汚染水が発生しているからである(下図)。廃炉作業の支障になるとして海洋排水の早期の排水開始の根拠となった保管タンクであるが、その解体はまだ12基に留まる。跡地には解け落ちた核燃料(デプリ)を取り出すための関連施設を設置するとされているが、デプリ取り出し作業の著しい長期化見通しもあり(2051年頃?)、まだ施設の計画さえはっきりしない。

   ☝参照記事1より引用

参照記事1:処理水2年で10万トン放出 福島第一原発タンク7割は放出基準超えhttps://digital.asahi.com/articles/AST8Q4JJGT8QUTFL00YM.html?iref=pc_ss_date_article

*当初一番安かった費用見積は?

なお、今のところ、水産物への著しいトリチウム蓄積は確認されていない(参照記事2)がこれに対し、中国はごく最近今年6月、放出を受けて停止していた日本産水産物の輸入再開を発表した。ただし、福島等10都県産物は引き続き対象外である。注意すべきは、中国などの禁輸措置で被害を受けたとして、今年7月末までに約81件790億円の賠償が主に水産物事業者等に支払われている。被害の中身は風評被害(国内消費者の買い控え)ではなく、事業者の損害補填である。この規模の賠償が今後もしばらく(数年?)続くとすると、前記事で述べた、これも海洋放出選択の根拠とされた海洋放出の低コストメリット(海洋放出(34億円)<水蒸気放出(1000億円)<固体化(2400億円))はもはや成り立たなくなり、三方法の内で一番コストがかさむものになりかねない。勿論、東電が払えるはずもなく、「廃炉」支援の名を借りて税金が際限なく投入されていく。自民党が如何に甘くずさんな見通しで、拙速に処理水処分の議論が進められたかが解る。

    ☝参照記事2より引用

    ☝(上2図)参照記事3より引用

参照記事2:処理水放出2年 海や海産物など環境への影響は【Q&A】?https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250824/k10014901891000.html

参照記事3:「東電が(デプリ処理のため)巨額特別損失」で通期赤字?国への借金返済どうなるhttps://mainichi.jp/premier/business/articles/20250918/biz/00m/020/005000c

一方で、次の事実も分かっている。

*タンクに残る水の多くはこのままでは「処理水」として流せない

東電によると、6月末現在で約128万トンのうち約87万トン(68%)は放射性物質の濃度が放出基準を超えている(最大で基準値の約2万倍)。ALPSなどで処理したものの、ストロンチウムやヨウ素などが取り切れなかったものだ。そのため、海に放出する前にALPSで再び浄化する「2次処理」(下図)をしなければならない。新たな配管の設置などが必要で、開始の時期は決まっていない。処理が長引けば、タンクの解体が進まず、デブリの取り出し工程に影響しかねない、と言われている。

    ☝参照記事1より引用

*汚染水処理に伴って発生している放射性廃棄物

これには、主にセシウム吸着設備内の使用済み吸着材(ゼオライト?)と、多核種除去設備「ALPS(アルプス)」で沈殿する汚泥の2種類が含まれる。中でもセシウム吸着設備は汚染源に触れた水を24年12月までだけで約280万トン処理し、吸着材に放射性物質が多く蓄積したとされている。原子力規制庁がセシウム137の放射能量を同月時点の東電などのデータをもとに概算したところ、セシウム吸着設備は24・2京ベクレルに上った。これは、デブリや汚染された建屋内なども含めた敷地内にたまったセシウム137(使用済み核燃料を除く)の約半分を占めることがわかっている。 廃棄物の処分の形はまだ見えず汚染水処理で発生する廃棄物は放射線量が高い。例 えば、事故直後に使用した吸着材を含む土のうは、19 ~20年の調査で袋の表面が最大毎時4・4シーベルト(1時間浴びると半数の人が死に至るほどの線量)に達した。東電は今後、こうした廃棄物をガラスやセメントで固化するなどし、より安定した状態で保管する考えだ。25年度中に固化処理の方針を示す計画だが、最終的に地下深くでの隔離処分が必要 になる可能性もあり、処分地は決まっていない。

    ☝(上2図)参照記事4より引用

参照記事4:福島第一原発のセシウム、半分は汚染水処理で発生した放射性廃棄物https://mainichi.jp/articles/20250822/k00/00m/040/108000c

ALPS処理水=汚染水は海洋放出によって少々減っても、全体の放射性廃棄物処理は、まだ本の入り口でしかない。2051年の廃炉官僚は絵に描いた餅のままであり、この「餅」を前提にした廃炉計画と財政支出は今一度厳しく見直されるべきであろう。

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